民法635条 削除

請負人の担保責任に関する規定のうち、注文者の請負契約の解除権に関する規定であるが、改正民法においては、現行民法の請負契約に固有の担保責任に関する規定は廃止されることになり、削除されている。改正民法においては、現行の請負人の担保責任をめぐる法律問題は、改正民法の債務不履行に関する諸規定、売買の担保責任に関する規定の適用に委ねられる。

改正民法の請負契約に関する部分においては、「請負人の担保責任」に関する規定が設けられているが、これは、債務不履行、有償契約に適用される売買に関する諸規定の適用に委ねるものである。請負に関する改正民法においては、このような考え方を前提とし、請負に特有な事項についてのみ規定を設けようとするものである。

改正民法における請負人の担保責任は、現行民法の仕事の目的物の瑕疵から、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したこと、あるいは引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを要件として認められるものである。改正民法においては、「仕事の目的物の瑕疵」から、「仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないこと」に請負人の担保責任の基本的な要件が変更されることになる。

参考判例

最判昭36・7・7
 請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求と損害額算定の基準自我問題になった事案において、請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、請負人に修補を請求したが、これに応じないので、修補に代わる損害の賠償を請求する場合においては、右修補請求の時を基準として損害の額を算定するのが相当であるとした。
最判昭52・2・22
 注文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能となった場合における請負人の報酬請求権と利得償還義務が問題になった事案について、請負契約において仕事が完成しない間に注文者の責に帰すべき事由によりその感性が不能となった場合には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法536条2項により、注文者に請負代金全額を請求することができ、ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益を注文者に償還すべきであるとした。
最判昭52・2・28
 仕事の目的物の瑕疵修補請求権と瑕疵修補に代わる損害賠償請求権との関係が問題になった事案について、民法634条1項所定の瑕疵修補請求権と同条2項所定の瑕疵修補に代わる損害賠償請求権とのいずれを行使するかは、注文者において自由に選択することができるのであって、注文者は瑕疵修補の請求をすることなく直ちに瑕疵修補に代わる損害賠償を請求することもできるとした。
最判昭53・9・21
 債権額の異なる請負人の注文者に対する報酬債権と注文者の請負人に対する目的物の瑕疵修補に代わる損害賠債権とは同時履行の関係にあるが、相殺することができるとした。
最判昭53・11・30
 請負工事の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権と請負人の工事代金債権との相殺が許されないとした。
最判昭54・2・2
 請負契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償請求をした場合において、請求時を基準として損害額を算定すべきであるとした。
最判昭54・3・20
 仕事の目的物に瑕疵がある場合において、注文者は、菓子の修補が可能であっても直ちに修補に代わる損害賠償を請求することができるとした。
最判昭54・3・20
 民法634条2項の損害賠償債権は、注文者が注文に係る目的物の引渡しを受けた時に発生する期限の定めのない債権であるとした。
最判昭56・2・17
 建物等の工事未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に請負契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、かつ当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情がない限り、同部分について契約を解除することは許されないとした。
最判昭60・5・17
 請負において、仕事が完成に至らないまま契約関係が終了した場合に、請負人が施工ずみの部分に相当する報酬に限ってその支払を請求することができるときには、注文者は、右契約関係の修了が請負人の責に帰すべき事由によるものであり、請負人において債務不履行責任を負う場合であっても、注文者が残工事の施工に要した費用については、請負代金中未施工部分の報酬に相当する金額を超えるときに限り、その超過額の賠償を請求することができるにすぎない。
最判平9・2・14
 請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。
最判平9・7・15
 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う。
最判平14・9・24
 建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合には、注文者は、請負人に対し、建物の建替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することを認めても、本条ただし書の規定の趣旨に反するものとはいえない。
最判平15・10・10
 請負契約における約定に反する太さの鉄骨が使用された建物建築工事に瑕疵があるとした。
最判平19・7・6
建物の建築に携わる施工者は、建物の建築にあたり、契約関係にない居住者等に関する関係でも、当該建物に、建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負う。
最判平23・7・21
居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険性を生じさせるものに限らず、瑕疵の性質に鑑み、放置するといずれはこのような危険が現実化する場合にも「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」に当たる。

民法636条~639条