建設業の許可とは
建設業を始めるには、軽微な工事だけを行う場合を除き、建設業の許可を受けなければなりません。
建設業とは(建設業法2条)
元請・下請その他のいかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。
- 「営業」とは、利益を得ることを目的として、同種の業務を継続的かつ集団的に行うことをいいます。
- 「請負」とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して、報酬を与えることを約束する契約のことをいいます。
- 「建設工事」とは、以下の工事をいう(1項)。
土木一式工事 、 建築一式工事大工工事 タイル・れんが・ブロック工事 塗装工事 さく井工事 左官工事 鋼構造物工事 防水工事 建具工事 とび・土工・コンクリート工事 鉄筋工事 内装仕上工事 水道施設工事 石工事 舗装工事 機械器具設置工事 消防施設工事 屋根工事 しゅんせつ工業 熱絶縁工事 清掃施設工事 電気工事 板金工事 電気通信工事 解体工事 管工事 ガラス工事 造園工事 - 「建設業者」とは、3条1項の許可を受けて建設業を営む者をいう。
- 「下請契約」とは、建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう(4項)。
- 「発注者」とは、建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者をいい、「元請負人」とは、下請契約における注文者で建設業者であるものをいい、「下請負人」とは、下請契約における請負人をいう(5項)。
建設工事に該当すると考えられる業務の例
- トラッククレーンやコンクリートポンプ車のオペレータ付リース
- 直接の工事目的物でない仮設や準備工の施工
建設工事に該当しない業務の例
- 剪定、除草、草刈、伐採
- 道路・緑地・公園・ビル等の清掃や管理、建築物・工作物の養生や洗浄
- 施設・設備・機器等の保守点検、(電球等の)消耗部品の交換
- 調査(埋蔵文化財発掘等を含む)、測量、設計等の委託業務
- 運搬、残土搬出、地質調査・観測・測定を目的とした掘削
- 船舶や航空機など土地に定着しない動産の築造・設備機器取付
- 自家用工作物に関する工事
建設業の許可を必要とする者(建設業法3条)
次の方は、個人・法人を問わず、国土交通大臣又は県知事の許可が必要となります。
① 建設工事の発注者から直接工事を請け負う元請負人
② 元請負人から建設工事の一部を請け負う下請負人(二次以降の下請負人も同様)
許可が不要な軽微な建設工事 (建設業法施行令1条の2)
建築一式工事 |
次のいずれかに該当する場合 (1) 一件の請負代金が1,500万円未満の工事(材料、消費税込) (2) 請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積が150㎡ 未満の工事 |
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建築一式以外の建設工事 | 一件の請負代金が500万円未満の工事(材料、消費税込) |
- 「建築一式工事」とは、建築の新築・増築などの総合的な工事のこと。
- 「木造」とは、建築基準法2条5号に定める主要構造部が木造であるもの
「住宅」とは、住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するもの - 工事の完成を二つ以上の契約に分割して請け負うときは、それぞれの契約の請負代金の合計額とする(建設業法施行令1条の2第2項)
- 材料が注文者から支給される場合は、支給材料費が含まれる(同令同条3項)
- 請負代金や支給材料に係る消費税、地方消費税が含まれる。
- 神奈川県では、軽微な工事の金額を上回る請負契約に基づき工事施工を行った新規許可の申請者について、始末書の提出が求められる。
- 建設業許可を取得した場合、申請時に申告した営業所以外で軽微な建設工事の請負契約を締結することはできない。
- 軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、電気工事業、浄化槽工事業、解体工事業は登録・届出が必要となります。また、建設業法上の許可を取得して、「軽微な建設工事」でない工事を請け負う場合であっても、届出を求めるなどの二重の手続が求められることもあります。
→ 附帯工事について
建設業の業種
一式工事(2業種)
建設工事の種類のうち、土木一式工事と建築一式工事は、他の27の専門工事とは異なり、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物又は建築物を建設する工事(補修、改造、解体する工事を含む。)であり、契約から完成引渡までの必要な工種のすべてを含むものをいいます。
通常は、二つ以上の専門工事を有機的に組み合わせて社会通念上独立の使用目的がある土木工作物又は建築物を造る場合をいいます。二つ以上の専門工事の組合せでない場合でも、工事の規模、複雑性等から見て総合的な企画、指導、調整を必要とし、個別の専門工事として施工することが困難であると認められるものも一式工事に含まれます。
通常、元請として請負い、全部を自社で施工するか、一部を下請けにまわします。個別の専門工事として施工が可能である工事は一式工事には該当しません。ただし、下水道工事などで一工区全体を一式で下請する場合など、実態としては下請であっても一式工事になる場合があります。
一式工事の許可を受けた建設業者でも、500万円以上の専門工事を単独で請け負う場合は、その専門工事業の許可が必要となります。
専門工事(27業種)
大工工事業 | タイル・れんが・ブロック工事業 | 塗装工事業 | さく井工事業 |
左官工事業 | 鋼構造物工事業 | 防水工事業 | 建具工事業 |
とび・土工工事業 | 鉄筋工事業 | 内装仕上工事業 | 水道施設工事業 |
石工事業 | 舗装工事業 | 機械器具設置工事業 | 消防施設工事業 |
屋根工事業 | しゅんせつ工事業 | 熱絶縁工事業 | 清掃施設工事業 |
電気工事業 | 板金工事業 | 電気通信工事業 | 解体工事業 |
管工事業 | ガラス工事業 | 造園工事業 |
主たる工事として施工する専門工事において、附帯的に発生する他の専門工事(附帯工事)が含めれたとしても、主たる工事の業種で判断されます。
業種区分の判断が難しい事例
ハイブリッドケーソン
ハイブリッドケーソンとは、港湾の防波堤で用いられる鉄殻と鉄筋コンクリートから成るケーソンです。その製作について建設工事に該当するか、防波堤という特殊な事情と相まって問題となります。
港湾に備え付ける以上、製作→浸水→曳航→設置という過程を辿ることになります。国土交通省は「制作場所」と「どこまで業務を担当するか」を判断要素としています。
国土交通省の回答
- 制作場所が「請負者の自社工場」である場合、製作のみを請け負う場合は建設工事に該当しない製造請負と解せるが、そこから曳航を経て現地で据付する場合は建設工事に該当し、許可が必要になる可能性が高い(平成24年12月28日)。
- 自社工場での制作であっても、その過程で工場を移動(曳航)させているなど、一般的な製造請負といえないような事実がある場合は、建設工事に該当し、許可が必要になる可能性が高い(平成26年3月26日)。
- 製作が製造請負でない場合は、とび土工コンクリート工事、鋼構造物工事又は土木一式工事に該当する(平成26年3月26日)。
知事許可と大臣許可(建設業法3条)
知事許可
一つの都道府県内にのみ営業所(※)を設けて建設業を営もうとする場合は、当該都道府県の知事許可が必要です。
いずれの行政庁で許可を受けた場合も、全国の現場で工事を施工することができます。
※「営業所」とは、本店、支店など常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。
「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいう。
国土交通大臣許可
二以上の都道府県内に営業所を設けて建設業を営もうとする者は、国土交通大臣許可が必要です。
営業所ごとに業種が違っても大臣許可が必要となります。
許可を受けた業種について軽微な建設工事のみ行う営業所についても法に規定する営業所に該当し、当該営業所が主たる営業所の所在する都道府県以外の区域内に設けられている場合は、国土交通大臣の許可が必要となります。
許可要件のうち「専任技術者」を各営業所ごとに配置しなければなりません。
知事許可と大臣許可を両方持つことはできない
同一の建設業者が知事許可と大臣許可の両方の許可を受けることはありません。
知事許可を大臣許可に、大臣許可を知事許可に換えることを「許可換え新規」の申請といいます。
→ 取扱業務
知事許可の有効期間内に大臣許可の申請を行った場合は、新たに大臣許可を受けることによって、従前の知事許可は効力を失います。
一般建設業と特定建設業(建設業法3条)
特定建設業の許可
建設工事の最初の発注者から直接工事を請け負う(元請)者が、1件の工事について下請代金の額(下請契約が2以上あるときはその総額)が4,000万円(ただし、建築一式工事は6,000万円。元請が提供する材料等の価格は含まれません)以上となる下請契約を締結して工事を施工する場合は、特定建設業の許可を受けなければなりません。
あくまで元請者として下請負人に出す金額についての制約であり、下請負人として工事を施工する場合は、請負金額の制約はありません。
特定建設業者は施工体制台帳と施工体系図を工事現場ごとに作成しなければならなず、下請代金の支払い期日や支払い方法についての規制があり、下請業者の労賃不払いに対する立て替え払いをしなければなりません。
下請負人保護を目的として、許可の基準のうち、財産的基礎に係る要件を一般建設業の許可のそれよりも加重し、あわせて、高度の技術的水準が要求される大規模工事の安全かつ適正な施工を確保するために、技術者に係る要件を加重しています。
一般建設業の許可
上記以外の場合は一般建設業の許可が必要です。
一つの業種について、特定と一般の両方を取得することはできない
同一の建設業者が、ある業種については特定建設業の許可を、他の業種については一般建設業の許可を受けることができます。しかし、同一業種について、特定と一般の両方の許可を受けることはできません。
一般建設業許可を特定建設業許可に、特定建設業許可を一般建設業許可に換えることを「般・特新規」といいます。→取扱業務
処分事例
2016年6月23日福岡県、2017年2月16日高知県
事例
特定建設業の許可を受けずに建設業法3条1項2号の政令で定める金額以上の下請契約を締結した。
処分
営業停止
許可の有効期間(建設業法3条)
許可のあった日から5年目の対応する日の前日をもって満了します(許可取得時の「許可通知書」に記載されています)。有効期間の末日が、土日祝日等の行政庁の休日に当たる場合も同様であり休日の翌日が満了日にはなりません。
更新手続
有効期限後も建設業の許可を維持したい場合には、期間が満了する日の30日前までに、当該許可を受けた時と同様の手続により更新の手続を取らなければなりません(規則5条)。
許可の更新申請中であれば、申請に対する処分が行われるまでは、現在の許可の有効期間が満了した場合であっても、その許可は有効なものとして扱われます。
失効したら
無許可業者となり、許可に係る請負契約を締結することができなくなります。
ただし、従前の許可の有効期間の満了後当該不許可処分が行われるまでの間に締結された請負契約に係る建設工事については、当該不許可処分が行われたことにより従前の許可がその効力を失った後も、継続して施工することができます(法29条の3第1項。
その他
許可には、条件が付される場合があります。→法3条の2
500万円以上の下請契約を締結する場合は、下請業者も許可を取得している必要があり、これに違反して下請契約を締結した場合には、元請業者にもペナルティーが科されます。