石綿(アスベスト)の取り扱い
石綿(アスベスト)を含む建材の除去作業などは労働安全衛生法、石綿障害予防規則、大気汚染防止法により規制され、除去後の廃棄物としての処理は廃棄物処理法により規制されています。
吹付け石綿、飛散性の保温材などは特別管理産業廃棄物の「廃石綿等」に該当します。また、一定量を超えて石綿を含む建材は「石綿含有産業廃棄物」として取り扱わなければなりません。
有害性
石綿は、対価被覆用の吹付け石綿、保温材などに使用されてきましたが、肺がん、中皮腫などの原因と言われ、平成16年から大半の建材の製造、使用が禁止となり、平成18年からは全面禁止されています。
大気汚染防止法のアスベスト規制
アスベストを含む「特定建築材料」が使用されている建築物等の解体、改造、補修作業を行う場合、作業実施14日前までに都道府県知事等に届け出なければなりません。
また、アスベスト飛散防止のため対象作業を行うときには作業基準の遵守も義務付けられています。
平成26年6月施行の改正大気汚染防止法により、届出義務者が工事施工者から工事の発注者に変更されました。発注者にも一定の責任を担わせることが明確化されました。
解体等工事の受注者は、アスベスト使用の有無の事前調査を実施し、発注者への調査結果等の説明も義務付けられました。
・「特定建築材料」:吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材(石綿が重量の0.1%を超えて含まれているもの)
事前調査
- 解体・改修工事を行う際には、その規模の大小にかかわらず工事前に解体・改修作業に係る部分の全ての材料について、石綿(アスベスト)含有の有無の事前調査を行う必要があります。
- 事前調査は、解体工事等の元請業者又は自主施工者に実施義務があります。
- 事前調査は、設計図書等の文書による調査(※設計図書等の文書が存在しないときを除きます)と、目視による調査の両方を行う必要があります。石綿含有の有無が不明であった場合は、更に分析による調査が必要になります。
- 事前調査は、建築物石綿含有建材調査者などの 一定の要件 を満たす者が行う必要があります(令和5年(2023年)10月から)。
【一定の要件】
- 建築物
- 建築物石綿含有建材調査者講習の修了者
- 特定建築物石綿含有建材調査者
- 一般建築物石綿含有建材調査者
- 一戸建て等石綿含有建材調査者(※一戸建て住宅及び共同住宅の住戸の内部に限る)
- 令和5年(2023年)9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録され、事前調査を行う時点においても引き続き同協会に登録されている者
- 建築物石綿含有建材調査者講習の修了者
- 船舶
船舶石綿含有資材調査者教育(仮称)を受け、修了考査に合格した者
- 建築物
- 事前調査の結果の記録を作成して3年間保存するとともに、作業場所に備え付け、概要を労働者に見やすい箇所に掲示する必要があります。
- 一定規模(解体工事の場合は解体部分の延べ床面積80㎡、改修工事の場合は請負金額が100万円)以上の解体・改修工事の場合、事前調査の結果を労働基準監督署に電子システムで報告する必要があります。
工事開始前の労働基準監督署への届出
石綿(アスベスト)が含まれている保温材等の除去工事の計画は、吹き付け石綿の除去工事と同様14日前までに労働基準監督署に届け出る必要があります。
労働者に対するばく露防止措置
解体・改修作業に従事する労働者に対する石綿(アスベスト)ばく露を防止するため、
● 石綿(アスベスト)等を切断等する際の湿潤化
● 呼吸用保護具・保護衣等の使用
● レベル1、2建材の除去等を行う際の負圧隔離
● 労働者への特別教育
● 石綿作業主任者の選任
などの措置が必要となります。
石綿(アスベスト)除去後の取り残しの確認
除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者による石綿(アスベスト)等の取り残しがないことを確認する必要があります。
資格者
- 建築物石綿含有建材調査者(建築物に係る除去作業に限る)
- 当該除去作業に係る石綿作業主任者
作業の記録・保存
- 事前調査結果の掲示や石綿(アスベスト)除去作業中の状況などを写真や動画により記録し、3年間保存
- 労働者ごとに、石綿(アスベスト)の取扱い作業に従事した期間、従事した作業の内容、保護具の使用状況などを記録し、40年間保存
作業レベルの分類
分類 | 発じん性 | 作業 | 石綿含有建材 |
---|---|---|---|
レベル1 | 著しく高い | 石綿含有吹付け材の除去作業 | 吹付け石綿・石綿含有吹付けロックウール(半温式、温式)・石綿含有吹付けパーライト、石綿含有吹付けパーミキュライト |
レベル2 | 高い | 吹付け以外の石綿含有保温材等の除去作業 | 石綿含有保温材、石綿含有断熱材(煙突・折板裏貼り付け)、石綿含有耐火被覆材 |
レベル3 | 比較的低い | その他の石綿含有形成板の除去作業 | 石綿スレート、ケイ酸カルシウム板、押出し成形セメント板、石綿吸音天井板、ビニル床タイル等 |
石綿含有建材の廃棄
- 廃石綿等((レベル1、2)飛散性のアスベスト)
- 「廃石綿等」の定義
- 吹付け石綿を除去したもの
- 以下の石綿を含む建材を除去したもの
- 石綿保温材、珪藻土保温材、パーライト保温材
- 石綿が飛散するおそれのある保温材、断熱材、耐火被覆材
- 石綿建材除去事業に用いられた石綿が付着しているおそれのある粉塵マスク、作業衣等
- 元請業者の実施事項
- 法定保管場所掲示板を設置しプラスチック袋等により密封して保管
- 「廃石綿等」を許可品目とする処理業者に委託
- 特別管理産業廃棄物管理責任者(有資格者)を選任
- 帳簿の備付けと保存
- 処分の方法(処分基準)
あらかじめ、固形化、薬剤による安定化その他これらに準じる措置の後に、耐水性の材料で2重に梱包し、管理型処分場の一定の場所において、分散しないように埋立処分することと定められています。
- 「廃石綿等」の定義
- 石綿含有産業廃棄物((レベル3)非飛散性のアスベスト)
- 「石綿含有産業廃棄物」の定義
建設廃棄物のうち、石綿を0.1%を超えて含むもの - 元請業者の実施事項
- 保管場所掲示板に石綿含有産業廃棄物が含まれる旨を記載
- 仕切りを設ける等、石綿含有産業廃棄物と他のものが混合するおそれのないように保管
- 保管時は、覆いを設けること、梱包することなどの飛散防止措置
- 委託契約書に石綿含有産業廃棄物を含む旨を記載しマニフェストにその旨と数量を記載
- 処分の方法(処分基準)
安定型処分場又は管理型処分場の一定の場所に、飛散しないように埋立処分する。
- 「石綿含有産業廃棄物」の定義