建設業と民法

時効

  • 工事代金などの債権の原則的な消滅時効期間
    → 「権利を行使することができる時」(客観的な起算点)から10年、「権利を行使することができることを知った時」(主観的起算点)から5年 いずれか早く到来する時に時効完成
    • 「権利を行使することができる時」とは、その権利の行使を妨げる法的な事情(法律上の障害)がなくなった時
    • 「権利を行使することができることを知った時」とは、権利者が、権利行使を期待されてもやむを得ない程度に権利の発生原因等を現実に認識した時
  • 工事代金や修補請求などの再建に関し、「協議を行う旨の合意」を書面やメール等ですることで最長1年間(合意を繰り返すことで最長5年間)事項の完成が猶予される。

法定利率

法定利率が年5%から年3%に引き下げられ、3年毎に1%刻みで見直される変動制になりました。

商事法定利率(年6%)が廃止され、工事代金の支払の遅延に伴う遅延損害金も、特約がない限り法定利率により算出されます。

民法632条(請負)

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことによって、その効力を生ずる。

雇用・委任との違い

雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる(民法623条)。

委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる(民法623条)。

雇用は、使用者の指揮命令の下で労務提供をするという点で、委任・請負とは異なります。

委任が法律行為をすること自体が目的なのに対して、請負は仕事の完成を目的とする点で異なります。


請負契約の効力
  • 請負人の仕事完成義務
  • 注文者の報酬支払義務
  • 履行補助者・下請負人の使用
参考判例
最判昭38・2・12
 工事の請負契約において、引渡した目的物に未完成部分があっても、その部分が未払代金に対し極めて軽微である場合には、信義則上代金支払期日の未到来を主張することは許されない。
最判昭40・5・25
請負契約に基づき建築された建物所有権が建物の引渡しの時に注文者に移転するとした。
最判昭44・9・12
請負契約に基づき建築された建物所有権が原始的に注文者に帰属するとした。
最判昭46・3・5
請負人が材料全部を提供して建築した建物が完成と同時に注文者の所有に帰したものと認めた。
最判平5・10・19
 建物建築工事の注文者と元請負人との間に、請負契約請負契約が中途で解約された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合には、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、右契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する。

民法633条(報酬の支払時期)

報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、624条1項の規定【労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。】を準用する。


請負人は、仕事の完成義務を負うのに対し、注文者は、仕事の完成に対する対価として、報酬の支払義務を負う。本条で準用されている民法624条1項の規定は、雇用の規定であり、労務提供の先履行、報酬(賃金)の後払いを定めるものである。


参考判例

最判平18・6・12

顧客に対し、融資を受けて顧客所有地に容積率の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部を売却して返済資金を調達する計画を提案した建築会社の担当者に、建築基準法にかかわる問題について説明義務違反があるとした。

634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)

次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。

一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。

ニ 請負が仕事の完成前に解除されたとき。


発注者に帰責事由あり 双方に帰責事由なし 請負人に帰責事由あり
工事が完成できないとき 報酬の請求が可能 割合的報酬の請求が可能 割合的報酬の請求が可能
工事完成前に解除されたとき 割合的報酬の請求が可能 割合的報酬の請求が可能 割合的報酬の請求が可能

解除された場合の可分な完成の取扱いに関する判例(最判昭56・2・17)を前提とし、請負における仕事の完成に関する新たな規定を設け、仕事が完成していない場合であっても、請負人の報酬請求権を認めるものである。

参考判例

最判昭52・2・22
 注文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能となった場合における請負人の報酬請求権と利得償還義務が問題となった事案について、請負契約において仕事が完成しない間に注文者の責に帰すべき事由によりその感性が不能となった場合には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法536条2項により、注文者に請負代金全額を請求することができ、ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益を注文者に償還すべきであるとした。
最判昭52・12・23
 整地請負契約における契約の全部解除が認められるべきであり、一部解除の認定が相当でないとした。
最判昭56・2・17
 建物等の工事未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に請負契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、かつ当事者が既施工部分の給付について利益を有するときは、特段の事情がない限り、同部分について契約を解除することは許されないとした。

民法635条